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エリュシオンでささやいて
第14章 brighting Voice

「須王、忍月栄一郎に頼むつもり!?」
「ああ」
「忍月よ!?」
棗くんの言葉に、須王が声を荒げた。
「それしか方法がねぇなら、頭を下げるしかねぇだろうが!」
「……上原サンが言うから? 上原サンのために、あんたは憎悪を捨てて、妥協の道を選ぶというの!?」
「捨ててねぇよ! だけど俺だって、目の前で救える命を見殺しにしたくねぇんだ。可能性があるのなら……」
「そうやってあんたは、昔を忘れようとするのね。昔をなかったことにして、良い子になろうとする」
「棗!」
……このままなら、駄目だ。
「わかってる? ひとに銃を向ける瞬間、昔のあんたは薄ら笑いをしていたの。そんなあんたが、今……笑っていないと本当に思える? 手に残る、命が消える瞬間を……、あんたは忘れて生きれると思っているの!?」
だから――。
「やめ……」
「うわああああ! なんだよ、なんでいるんだよ!?」
突然の裕貴くんの声。
ふたりを止めようと動き出す寸前だったあたしは、驚きのあまりにびくっとして、裕貴くんの声に振り向く。
「ひとをストーカーのように言うなよ。今日は病棟の方で歌を歌ってきて、その帰りだ。たまたまさ」
そこにいたのは、裕貴くんと――。
「やあ、お姉サン」
パーカーとハーフパンツ姿の――。
「は……HARUKA、くん?」
この場に明らかに異質な彼は、にこっと笑った。

