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エリュシオンでささやいて
第14章 brighting Voice

そんな中で女帝が、真っ赤な顔で憤慨し、キーキーと叫んだ。
「オ、オバ……っ、オバ……っ!!!」
「耄碌バアサンというよりは、いいでしょう?」
……以降、女帝の怒りは筆舌に尽くしがたく。
裕貴くんが知る遥くんは、こんなキャラだったのだろうか。
女帝を宥めながら、ちらりと裕貴くんを見ると、口をあんぐりと開けて固まっている。
そうか、そんなキャラではなかったんだね。
「どうした、ゆ……」
駆けつけた須王も、天使を見て言葉を失ったようだったが、女帝から引き剥がしたあたしを、彼の大きな体の後ろに隠し、警戒を露にさせた。
そして、先ほどまでご立腹だった棗くんは、天使が視線を送っていた壁の貼り紙を見て、目を細める。
「これで言うのは三度目だけど、お兄サン達が僕を殺してしまいそうな危ない目をするから、最後に言っておく。僕は病棟で歌を歌いに来た。別にストーカーでもないから」
こんなに、ストレートに話す子であるのなら、上野公園でなぜ直接話しかけてくれなかったのだろう。
なぜあんなに意味ありげに。
「あなたは、裕貴くんの友達の遥くんなの? 今、入院している」
あたしは単刀直入に尋ねる。
「そうとも言うけど、違うとも言える」
なによ、それ。
「だったら、上野公園で俺達に会ったのは?」
須王の声は恐ろしく低い。
「同じとも言うけど、違うとも言える」
そのなぞなぞのような問題を、誰か解けるひとはいるのだろうか。

