この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
エリュシオンでささやいて
第14章 brighting Voice

……恐らく、須王と天使以外の誰もが、驚愕に動けなくなっただろう。
特に裕貴くんがイケメン顔が泣きそうな表情で、棗くんでさえ目を見開いたまま固まっているのだ。
「お前は言いたくないのなら、答えなくていい。俺が勝手に答えを見つける」
「ちょ、ちょっと待ってよ。なにを勝手に……」
僅かに天使の目に動揺が走っている。
「なんだ、俺のプロデュースでは不服か? ちゃんとプロダクションがつき、給料も出る。おまけに友達も一緒だぞ? な、裕貴。お前がギターを始めたのは、こいつのためだったよな。一緒に出来たら文句はねぇよな?」
「そ、そうだけれど。そうだけどさあ」
裕貴くんは、混乱の境地にいるようで、今にも泣きそうだ。
天使の綺麗な顔が、僅かに引き攣った。
「はは、ははは。なに、偉大なる天才音楽家さんが、正体不明の僕を入れてなにをするというのさ。参ったな、どこから出てくるんだ、そんな発想」
「お前が入院中の遥であれ、上野公園で会ったHARUKAであれ、柚が会ったという天使であれ。不問にしてやると言っているんだ。力尽くで吐かせる方法をとらねぇんだから、優しいだろう。お前はただ音楽をしてりゃいい」
優しいと、自分でいうな!
なにひとつ、こちら側に優しい要素などないじゃないか。
「音楽の才能があれば、敵であろうと受け入れる」
ああ、好戦的で不遜な王様、ここにあり。
「早瀬さん、私は反対です!」
女帝が片手を上げてそう反対して、あたしもうんうんと頷いたが、
「演者ではない奴には、決定権はねぇ」
王様は、速攻却下。
「小林、棗。どうだ?」
裕貴くんは、既に了承とみなされたらしい。
「がはははは。俺は別にいいぞ」
「私も。まあ、目の届く範囲においておけば、安心だし」
「ということで、決定だ」
あたしは頭を抱えた。

