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エリュシオンでささやいて
第14章 brighting Voice

「奴、戻ってこれないことを覚悟していたわよね」
女帝がぼそりと呟く。
「それなのに、『次に会う僕』ってなに?」
そう、あたしもわからなかった。
須王が片手で顔を覆うようにして言う。
「遥やHARUKAと同じで違い、あいつであり皆……。もしかして、あいつも黒服達と同じか?」
「え?」
棗くんが呼応するようにして言った。
「複製(コピー)」
「複製?」
この背筋に駆け上ってくる悪寒はなんだというのだろう。
「彼の細胞が再生出来て、肉体の付け替えも難なく出来るというのなら。他人の細胞すら自分の細胞に変化させることが出来るのかもしれない。そう考えれば、理論的にはありえなくもない話よ」
同じひとが増産されるって?
「それ、無理がない? だって、生まれたら別の個体であって、同じではないよ? 同じ細胞を持っただけのものなんだから、意思というか心が同じになるわけがないわ」
たまらずあたしは叫ぶが、棗くんの声は冷ややかだった。
「もしも、他人の肉体も臓器も、自分の細胞で再生出来るとして。細胞すら、全く同じ肉体を量産された人間なら、違う意思を持つということの方が考え難くなくて?」
「だけど……」
それはあまりにSF。
あまりにファンタジーだ。
「寝たきりの遥とも、上野公園で見たあいつとも、なにか違う気がした」
須王が言う。
「どれがオリジナルかはわからねぇが、柚になにかを思い出させるような素振り、裕貴や過去の情報の共有はしっかりなされている。それ以外のところでの違いが『個性』だとすれば、機械的な分裂のような増殖よりも、よほど現実的だ」
確かに、あたしも違和感は感じたけれど。

