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エリュシオンでささやいて
第14章 brighting Voice

「でも情報の共有ってどうやって……」
「それはわからねぇ。双子がよくテレパシー的なものを感じられるというが、それ系なのか、それとも細胞がなにかを伝えるものか。それとも外部的なもので与えられる情報か。これは、次に会うあいつか、あいつの細胞を移植された朝霞に聞いてみなければわからねぇな」
あたしはへたりと床に座り込んだ。
次に、また元気な顔で天使は現れるのだろうか。
――お姉サン、また会えたね
そう笑いながら。
なぜかな。
会って少しだったというのに、彼がもう手術室から出てこないと思うと、泣けてしまうんだ。
なぜかな。
同じ顔でも、「彼」にもう会えないかもしれないと思うと、心が痛むんだ。
否定しながら肯定することで、あたしは彼を犠牲にする罪悪から逃れようとしている。
何度も生き返る個体。
死ぬことのない個体。
延々と生きる天使の存在を、あくまで推測だ、ありえないと思いながらも、受け入れている自分の矛盾さに気づかないふりをして。
あたしが断片的に見る、天使の頭が落ちるというもの。
それは九年前、このことを垣間見ていた記憶なのだろうか。
むしろ、そうとしか考えられない。
「そして問題は、あいつに朝霞を助けろと命じている奴もいるということだ。ということは、組織エリュシオンの中で俺達に敵対しない、反対勢力もあるということ。遥はそいつの手の中に守られているということになる」
守られている――それは。
「だったら、須王さん。遥が特別室にいるのは、守られているってこと?」
「そう考えれば、見方が変わってくる――」
――須王、忍月栄一郎に頼むつもり!?
「無論、実験のために監禁しているとも考えられる。そうなれば、遥にいつ誰がどこで接触して、HARUKAの行動をさせているか、ということになる」
須王の顔は、どこまでも暗かった。

