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エリュシオンでささやいて
第14章 brighting Voice

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数時間後、朝霞さんは命を取り留めた。
手術は大成功だがまだ絶対安静が必要で、現在小林さんが入っていたあの特別室で集中治療を施している。
雑菌を懸念する医師により、ここ数日は面会者を控えるように言われ、遠目でしか機械をつけられている朝霞さんを見ることが出来なかったが、あれだけ厳重な病室の上に、棗くんが手配した護衛役がいるというし、あたし達はひとまず引き下がることにした。
朝霞さんはそうして助かって手厚い治療の最中にいるが、あの天使は、帰らぬひととなったのだ。
今、あたし達は外来の待合所にいる。
今日が休日だったこともあり、待合所には誰もいなかった。
「遥のおかげで、朝霞が助かったのって……喜んでいいのか悪いのかわからねぇ。遥なら朝霞を助けられるとしても、遥ではないあいつが、朝霞を助けらるわけないとも思っていたし、やっぱり助けられたかとも思うし」
須王と棗くんが席を外し、残ったメンバーの中、裕貴くんが真情を吐露する。
「あの口ぶりなら、同じ記憶を持つ違う遥が、また現れるってことだろう? だからってあいつが死んでいいはずもないし、かといって朝霞が死ねばよかったのかと思ったら、そういうわけでもないし」
その複雑さは、あたしにもよくわかった。
「もしも今後、またあいつが現れたら、その時俺、遥って声をかけられるかわからない。元気な遥を見るのは嬉しいはずなのに、弱々しい遥じゃないと遥とは思えない気もして。今までどんな遥でも俺のダチだと思っていたのに、偏見みたいな自分が本当に嫌になる」
「裕貴くん……」
「なにより俺が知っている遥は、本当の遥なのか? なにがオリジナルなんだろう。もう本当に頭、パニックでさ」

