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エリュシオンでささやいて
第14章 brighting Voice
 
「あのさ、俺、遥からLINE貰ったじゃん?」

 裕貴くんが、ホットココアを口にしてから言う。

「うん。あの子がしてくれたんだよね」

 あの天使が、朝霞さんを助ける側にいたことは、その件でも裏付けされたようなものだけれど。

「ん……。と思っていたんだけれど、道をどうとか公園名とかやたら具体的だったのがひっかかって。それがわかるということは、少なくとも土地勘がなきゃ駄目だろう? 俺と棗姉さんだって、あの公園にすぐ行き着いたわけじゃない」

「調べたんじゃない?」

「まあそうなんだろうけど、あの遥がLINEの主だとしたら、入院病棟だかの歌の真っ最中じゃないか。そんな暇、あったのかなって。歌を歌っていたという前提だけれど」

 裕貴くんはポスターを見上げる。

 そこには小さく日時が記されていて、確かに歌を歌いながらは無理だ。
 大体天使は、朝霞さんの行動をどうやって知ったのだろう。

 朝霞さんと天使に繋がりがあった?
 それとも朝霞さんの監視役も同席していたのだから、敵の内部にいる誰かが流した情報なんだろうか。

「別の遥から裕貴に連絡したのかもよ? でもあれ? スマホの受け渡しはどうしたんだろう。LINEって複数台で出来なかったよね」

 女帝の疑問に裕貴くんが答える。

「うん、初期化されるはず。だからあいつがあのスマホでしたのだろうと思っていたけど……、絶対に出来ないわけでもないんだよね」

 さすがはSNSに詳しい裕貴くんだ。
 あたしには、そういうのはさっぱりだ。

「iPad版、パソコン版の他にも、凄い手間と時間はかかるけれど、LINEと一部のスマホのOSのバックアップ機能からの復元で、同一アカウントでのやりとりが出来ないこともない。遥達はいつもスマホを持たされていたのかなって思えば、なんで面倒な手間をかけてLINEを複製するんだよって」

 確かに電話だけの機能ならば、新規のスマホでもいいはずだ。
 それがあの番号に拘ったということは、捨てたくない情報があったとしか考えられない。

 たとえばそれは――。

「裕貴くんと、繋がっていたかったのかも。どんな遥くんでも、きっと裕貴くんのことが大切で」

 あたしの言葉に、項垂れた裕貴くんは肩を震わせた。
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