この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
エリュシオンでささやいて
第14章 brighting Voice

「一旦地上に出て、社員入り口の裏口から中に入る」

 エレベーターに乗った時、須王はそう言った。

「社員のふりをして中に入って、大丈夫? ばれるんじゃ……」

「誰がふりをするかよ。ちゃんと支配人に話を通してあるから大丈夫」

 須王から話を聞くと、彼はあたしが寝ている間に、昔恩を売ったという「Blue Moon」の支配人に電話をしたらしい。

 当然、チケット分は売切れてしまっているが、後の方でいいのなら聞けるスペースがあるからとのことで、騒がれたくない須王にとっては願ったり叶ったりで、目立たない裏口から中に入らせて貰うことにしたようだ。


 そうして今、コネがなければ入れない高級クラブが、目の前に拡がっている。

 歴史を感じさせる、古ぼけた倉庫。
 それは、裕貴くんと出会った横浜の赤レンガ倉庫なみに大きい。

 裕貴くんに自慢してやろうと、写メを撮りながら裏口に歩いていく。
 
「お前、来たことねぇんだ?」

「来れるはずないでしょう? 音楽の大御所でも簡単には入れないと聞いているこのお店に、そば屋の出前のように電話一本で入れるコネなんかないし!」

 改めて考えると、この王様は凄い男だ。
 その才能もコネも、尋常ではない。

 心の中で舌を巻いていると、体を屈めた須王に顔を覗き込まれた。

「惚れ直した?」

 にやりと笑われて。

「あ、あたしは、そんな肩書きなんて……」

 不意打ちの美しい笑みに、どっきんと心臓が跳ねてしまったことを隠そうと、そらした目を泳がせて答えるあたしに、須王は笑った。

「そうだよな、お前が惚れたのは俺自身だものな?」

 否定出来ないのが、なにか……悔しい!

「ず、随分とおわかりのようで!」

「勿論。お前の気分が晴れない時の一番の療法は、音楽だろうことも」

「え?」

「色々考えたんだよ、どこに連れていこうかと。どう考えても、理不尽なことが続いた今は、音楽がお前にとっていいだろうなと思ってね」

 須王は癖ある前髪を手で掻き上げる。

「だから別に、デートに手を抜いたわけじゃねぇから。音楽なら別にいらねぇコネをフル活用して、お前を楽しませてやるし、俺も勉強になるし。いいことづくめ」

「須王……」

「よかっただろう、俺が音楽してて。……運命的だと思わね?」
/1002ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ