この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
エリュシオンでささやいて
第14章 brighting Voice

あたしは返事の代わりに、須王の腕に抱き付いた。
音楽をしていたから苦しかった。
でも、音楽がもたらしたのはそれだけではない。
あたしと須王を結びつけてくれた。
昔も今も――。
「今日は誰がゲストなのか知ってるの?」
「手島さより」
それはジャズピアノを弾きながら歌う、海外で活躍する日本人アーティストだ。
「うわ、グラミー賞こそ逃したけれど、海外でも大人気の……天使の七色を持つという?」
ふくよかな体格をした女性で、三十代後半あたりのはずだ。
「ああ、俺も生声は初めてだ。最近は表に出ていなかったから余計、チケットはすぐ売れただろうな。緊急シークレットライブのようだぞ」
「シークレット……それを聞けるの!? あたしが!?」
期待にぞくぞくする。
あたしは、須王と共に倉庫の中に入った
裏口にはひとが立っていたが、須王の名前だけでなんなくパス。
今度ひとりで、勝手に須王の名前出して入ろうかしら。
「……お前、心の声、ただ漏れ。俺を連れていけよ、なんでひとりで来ようとするんだよ」
「冗談だってば」
……もぐもぐの音楽ひとり旅、失敗。

