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エリュシオンでささやいて
第14章 brighting Voice

 あたしは返事の代わりに、須王の腕に抱き付いた。

 音楽をしていたから苦しかった。
 でも、音楽がもたらしたのはそれだけではない。
 
 あたしと須王を結びつけてくれた。

 昔も今も――。


「今日は誰がゲストなのか知ってるの?」

「手島さより」

 それはジャズピアノを弾きながら歌う、海外で活躍する日本人アーティストだ。

「うわ、グラミー賞こそ逃したけれど、海外でも大人気の……天使の七色を持つという?」

 ふくよかな体格をした女性で、三十代後半あたりのはずだ。

「ああ、俺も生声は初めてだ。最近は表に出ていなかったから余計、チケットはすぐ売れただろうな。緊急シークレットライブのようだぞ」

「シークレット……それを聞けるの!? あたしが!?」

 期待にぞくぞくする。
 
 あたしは、須王と共に倉庫の中に入った
 裏口にはひとが立っていたが、須王の名前だけでなんなくパス。

 今度ひとりで、勝手に須王の名前出して入ろうかしら。

「……お前、心の声、ただ漏れ。俺を連れていけよ、なんでひとりで来ようとするんだよ」

「冗談だってば」

 ……もぐもぐの音楽ひとり旅、失敗。
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