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エリュシオンでささやいて
第14章 brighting Voice

有名なお店なのに、お手洗いに行くまでの道がまるで迷路みたいで、切羽詰まっているひとには、かなり辛い造りだ。
慣れればいいのかもしれないけれど、スタイリッシュすぎる案内の看板の矢印がどちらに向いているのか、初心者には判別するのも大変だと思う。
行き着いたお手洗いから出た時、須王からLINEがあった。
『迷ってまちぇんか?』
「もう、失礼しちゃうわ!」
既読無視を決め込んで歩き始めたあたしは、数分後に青ざめる。
「やばい。迷ったかも……」
複雑な道いえども、建物内。
歩いていれば、そのうち音が聞こえてくるだろう……そう思ったのに、行きにはなかったドアが薄く開いており、その先は階段だ。
待て待て、なぜ階段?
勿論、お手洗いまでの看板など、見る影もない。
「ここ、どこよ……」
これは、須王に泣きついた方がいいのだろうか。
迷子になったから、迎えに来てと。
いやいや。
ここは何事もなかった顔をして戻らないと、須王にまた馬鹿にされる!
そう意気込んだ時、僅かに開かれたドアから声が漏れた。
「うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
それはもがき苦しみ、のたうち回っているような絶叫。
「!?」
なに!?
ガシャーン。
ガシャーン。
なにかが矢継ぎ早に壊れる音がして、あたしは及び腰になる。
「あ゛あ゛あ゛ああああああ!!」
だからなに!?
中で暴れるなにかが、誰かを襲っているの!?

