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エリュシオンでささやいて
第14章 brighting Voice
 
「……んんんんっ!!」

 どんどんと須王の胸を叩いて離れようとするけれど、それすらねじ伏せるようにして、須王はキスを深めていく。

 甘いブランデーの味がする。
 くらくらとしてしまうのは、酔ってしまったからなのか。  

 もう、ここがどこでどんな状況なのかわからない。

 ただ、須王が恋しいと思っていたあたしは、突如現れた須王とのキスに溺れるのはいつもより早くて、須王が好きでたまらない気持ちが全開になってしまった。

 ああ、このひとが好き。
 誰にも渡したくない――。

 我儘にも似た独占欲に支配されながら、彼からの愛が嬉しいと、もっと欲しいのだと、あたしは彼の背中に手を回し、甘い吐息を漏らしてそれに応えた。

 そして、唇を離した須王は、あたしを片手で抱きしめながら、ウェイターに言った。

「……やんねーよ。俺以上の愛し方、お前に出来るわけねぇだろうが。こいつはもう、俺じゃねぇと満足出来ねぇ心と体になっているんだよ」

 顔を須王に押しつけられていて、よかったと思う。
 
 絶対あたし、顔は真っ赤だと思うから。

「やってみなければ……っ」

「俺、他の男が簡単につけいることができるような、生温い愛し方してねぇんだわ。悪いけど、こいつは生まれ変わっても俺のもんだから」

 ……死ぬまでではなく、死んだ後も、か。

 もぐもぐの顔面……、只今、絶賛弛緩中。

「そ、その割には、慌ててすっ飛んで来たじゃ……」

「俺が慌てたのは、こいつが酒を飲まねぇようにだよ。誰が見せるか、酒に酔ってとろんとした、こいつの可愛い顔。見れるのは、俺だけの特権なんだよ」

 ぎゅっと強く抱きしめられ、あたしの心臓はバクバクが止まらない。

「それでもこいつに手を出そうとするのなら、俺の敵になることを覚悟しておけ。俺は容赦しねぇぞ?」

 声が剣呑さを強めて低められ、思わず背筋に冷たいものが走る。
 あたしですらそうであるのだから、周りはもっとダメージは大きいはずだ。

「すみませんでした!!」

 ウェイターは焦った声を出していなくなったようだ。
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