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エリュシオンでささやいて
第14章 brighting Voice

「後半戦って……」
そこであたしは初めてきょろきょろとあたりを見渡せば、こちらに向けられている複数の視線はあるものの、ステージには手島さよりはいない。
「休憩にして貰ったんだよ。ちょっと声も苦しげになってきたし、お前が妬いていた手島へ合図して」
「……っ」
図星をさされると、妙に恥ずかしい。
あたしは赤くなったまま、顔を俯かせた。
「へぇ、妬いてたの、認めるんだ?」
ああ、もう降参だ。
あたしは自分勝手な妄想で勝手に辛く思い、そして須王の言葉で勝手に救われ、勝手に須王への想いを溢れさせているだけだ。
須王にはなにひとつ、非はない。
あたしは、須王の服をぎゅっと掴んで、こくりと頷く。
「……妬いちゃったの。須王と手島さん、いい雰囲気に思えて」
「……」
「妬いちゃった。あたしも須王と音楽をすれば、須王の隣に堂々と立てるのにって」
「音楽していようがしていまいが、俺の隣はお前だけだそ? 俺、お前以外の女を横に置く気は、まったくねぇから。これからも」
「ん……」
須王が優しくあたしの頭を撫でる。
「お前、前列に来いよ。遠目だからありえねぇことを思うんだぞ?」
「ん……。でも、ここでいい」
あたしは顔を上げ、須王をじっと見つめて言う。
「須王の言葉で安心したから。だから、須王の神聖なる音楽を、あたし……ここで見守ってる」
そう微笑むと、須王ががばりと大きな体であたしを包み、頭の上に顎を乗せて言う。
「お前なんなの、ますます可愛くなって。これ以上、俺をどうする気だよ。ここで無性にお前を抱きてぇんだけど」
「却下」
「めちゃくちゃお前の名前呼んで、お前のことが好きでたまらねぇって叫びながら、全身でお前に俺の気持ちをわからせてやりてぇ。お前に俺の名前を呼ばせて、好きでたまらないって言わせて、ひとつになりてぇ……」
「……後でね」
「言ったな、お前」
須王があたしの両頬を片手でぷにぷにと押してくる。

