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エリュシオンでささやいて
第14章 brighting Voice

後半は、ホイットニーヒューストンの『 I Will Always Love You』のジャズアレンジから始まった。
映画にも使われた有名過ぎるこの曲、手島さよりのパワフルでソウルフルな声を際立たせて、特にサビに入ると鳥肌が立つほどだ。
須王のピアノと歌声がねっとりと絡みつくような演奏は、やはり妬けてしまうほどの息が合ったところをみせる。
先ほどのような邪念を捨て、目を瞑って音楽だけを聴くと、不思議に心が落ち着いた。
それだけ音楽が、心に直接訴えてくる素晴らしいものだからだろう。
あたしに向けて弾くと、須王は言った。
自惚れたいわけではないけれど、これはあたしがひとりで受け止めるにはかなりの威力と破壊力があり、目を閉じていると心身共に熱くなってしまう。
まるで須王に抱きしめられながら、心ごと愛撫を受けているようで。
「やば……」
喉がからからと乾いてきて、仕方がなく目を開く。
今ですら、須王はストレートに愛の言葉を口にするようになって、こちらが赤面して降参ばかりしているというのに、音楽を通すとそれ以上になる。
回りくどいことをせずに、理屈抜きに一気に向かってくるため、免疫のないあたしは一気に許容量のメーターが振り切れてしまうんだ。
「あたし、須王の音楽に殺されるかもしれない……」
お水をごくごくと飲んでも、体に残る火種は消えてくれなくて。
「発情退散、発情退散……」
ようやく落ち着きを見せたのは、次の曲に入って来たからだ時だった。
全く趣の違うメロディーラインのピアノが入って来て、驚く。
「これ、思いきりロックじゃない?」
チャックベリーの『Johnny B. Goode』。
ロックンロールのスタンダード曲だ。

