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エリュシオンでささやいて
第14章 brighting Voice

「……っ」

 ピアノを馬鹿にした聴衆達、見たか。
 彼が凄いのは、手段ではなく、考え方なんだ。

 それもわかっていないのに、音楽を語るんじゃない。
 自分達の音楽こそが最高なのだと、他を排斥するんじゃない。

 音楽は、ひと如きは太刀打ちできない神聖なもの。
 ひとが、音楽の幅を決めてはいけないのだから。
 
 ――演奏が終わった。

 あたりはしーんと静まり返っている。
  
 終わったのを気づいていないのか。
 それとも、終わっても反応したくないのか。

 だからあたしは、力一杯拍手をした。
 湧き上がる感動が、あたしを奮い立たせた。

「凄くよかった。トリに相応しかったよ!!」

 手が痛くなるほど拍手して、あたしは大きな声で叫ぶ。

「凄く感動した。ねぇ、皆さん、そうでしょう!?」

 すると、後ろからパチパチと音がした。

 振り向くと、須王に威嚇されて引き下がったあのウェイターだった。
 それにつられるように、バーテンや他のウェイターが拍手をすると、そこから少しずつ拍手が増えて、凄まじい大喝采となった。

 音楽を馬鹿にしていた聴衆は肩身が狭そうにしていたけれど、その様子を見ていると、彼らも感じ入るところはあったのだろう。

 なにはともあれ、須王は成功したんだ。

 結果よければ、すべてよし。

 立ち上がったあたしは、ずっと手を叩き続けた。
 痛かろうが、後で腫れようが、そんなものはいい。

 録音はばっちりだ。
 スタジオに戻ったら、皆に聞かせてやろう。

 棗くんに言って、あたしのスマホの着信音にして貰おうかな。
 初めての着声は、須王の歌声なんてとても素敵。
 ……バカップルと言われようが平気だ。
 それくらい、あたしは須王の歌声に感動したのだから。 

 須王は珍しく少し照れて、頭を掻きながら頭を下げていた。
 
 
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