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エリュシオンでささやいて
第14章 brighting Voice
 

 *+†+*――*+†+*


「ぐががあああああ゛あ゛あ゛」

「ぐぎい゛い゛い゛い゛」

 ……只今、もぐもぐは、控え室に向かっております。

 聞こえてくるおぞましい声は、ゾンビ化した手島さより。
 それを肩に軽々と持ち上げ、控え室に向かって運んでいるのは須王。

 須王がこの場にいるかいないかで、ゾンビ化を目撃しているあたしのパニック度は調整されるようだ。

 須王は公衆の面前で、審査員がどんなジャッジを下すのかを聞く前に、変貌の兆しを見せた彼女を堂々と拉致ってみせた。

 彼女は須王の肩の上で、きごちない動きをしたと思うと、関節を伸ばすようにして、筋肉を硬直させた。

 そしてその目は異様にぎらつき、ついには涎を垂らしながらの奇声が始まったかと思うと、彼女を逃さない須王に攻撃的な眼差しをして、彼の肩に噛みついた。


「NOOOOOOOOO!」


 共に廊下を駆けていたあたしは、ムンクの叫び状態になりながらも、涙で滲んだ目で手島さよりをギンと睨み付け、その頬や頭をぱんぱんと叩いて、須王が餌となるのを阻止する。

「須王を食べちゃ駄目、駄目なの!!」

「……お前、基本臆病のくせに可愛いことするよな」

「なにが可愛いのよ。あたし、必死に戦っているんだよ! もう少し緊張感を持ちなさいよ!」

 ぎゃあああ!
 また須王に噛みつくな、手島さより!

「本当にお前は可愛いよ。俺を取り戻すために、戦うなんていう発想。ここで俺を悶えさせてぇのかよ」

 食われかけている須王が、やけに嬉しそうな顔で言う。

「大丈夫。お前以外に、俺を食わせねぇから。これからたっぷりと、お前に食わせてやるから。俺は、お前のもの」

 こんな状況なのに、問いかける須王の目が甘いこと。
 どうして色香なんて出せるのか、よくわからない。
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