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エリュシオンでささやいて
第14章 brighting Voice

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「ぐががあああああ゛あ゛あ゛」
「ぐぎい゛い゛い゛い゛」
……只今、もぐもぐは、控え室に向かっております。
聞こえてくるおぞましい声は、ゾンビ化した手島さより。
それを肩に軽々と持ち上げ、控え室に向かって運んでいるのは須王。
須王がこの場にいるかいないかで、ゾンビ化を目撃しているあたしのパニック度は調整されるようだ。
須王は公衆の面前で、審査員がどんなジャッジを下すのかを聞く前に、変貌の兆しを見せた彼女を堂々と拉致ってみせた。
彼女は須王の肩の上で、きごちない動きをしたと思うと、関節を伸ばすようにして、筋肉を硬直させた。
そしてその目は異様にぎらつき、ついには涎を垂らしながらの奇声が始まったかと思うと、彼女を逃さない須王に攻撃的な眼差しをして、彼の肩に噛みついた。
「NOOOOOOOOO!」
共に廊下を駆けていたあたしは、ムンクの叫び状態になりながらも、涙で滲んだ目で手島さよりをギンと睨み付け、その頬や頭をぱんぱんと叩いて、須王が餌となるのを阻止する。
「須王を食べちゃ駄目、駄目なの!!」
「……お前、基本臆病のくせに可愛いことするよな」
「なにが可愛いのよ。あたし、必死に戦っているんだよ! もう少し緊張感を持ちなさいよ!」
ぎゃあああ!
また須王に噛みつくな、手島さより!
「本当にお前は可愛いよ。俺を取り戻すために、戦うなんていう発想。ここで俺を悶えさせてぇのかよ」
食われかけている須王が、やけに嬉しそうな顔で言う。
「大丈夫。お前以外に、俺を食わせねぇから。これからたっぷりと、お前に食わせてやるから。俺は、お前のもの」
こんな状況なのに、問いかける須王の目が甘いこと。
どうして色香なんて出せるのか、よくわからない。

