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エリュシオンでささやいて
第14章 brighting Voice

「別に間違えてないよ。須王の歌、凄く素敵で……あたし」

 今でも、須王の歌声を思い出すとぞくっとする。
 体が熱くなって、その……濡れてしまうほど、官能的だった。

「あたし?」

 しまった。おかしなところで切ってしまった。
 続きなんて、恥ずかしくて言えるわけがない。

 それにほら、ここにはゾンビがいるんだから、早くゾンビ抑制剤のポムを飲ませなきゃいけない。

「す、素敵だったということで! ほら、早く控え室に行こう」

「あたし?」

 しかし須王は逃さない。

「俺が初めてお前を想って歌ったのに、〝素敵だった〟だけ?」

 あたしを想って歌った……。

 きゅん、と胸の奥が疼いた。

「……っ」

「ゆ~ず?」
 
 ああ、もう……逃れられない。

「たまらなく、格好よかったです」

「……」

「惚れ直しました」

 うう、返事もストップの声もかからない。

「今でも、思い出すだけで興奮してぞくぞくする」

「……」

「ぞくぞくして、あたしの体……ああ、もう駄目。これ以上は許して」

 返事すらしてくれない須王の前で、あたしは真っ赤だ。

「……観客(ギャラリー)いるけど、ここでお前の体がどうなっているのか確かめていい?」

 あたしと須王の間には、ぎらぎらと異様な光を放つ手島さよりの目。

「駄目!!」

 そこであたしは、またもや現実を忘れていたことに気づくのだった。

 ゾンビの存在すら忘れさせる、須王の桃色マジック、凄い!
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