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エリュシオンでささやいて
第14章 brighting Voice

「じゃあ、なに? ゾンビに見える新手の病気とか?」
突如筋肉を硬直させ、血走った目をして奇声を発して襲いかかってくる患者がいたら、もっと日本がパニックになって、ニュースになってもいい。
だけど抑制剤が存在するということは、そうした症例が昔から認められているから、医療チームが特効薬を作ったんだよね?
そもそもゾンビがなぜ怖いかって、食われかけた外貌以上に、死後硬直がわかる動き方とか、明らかに尋常ではない凶暴な奇行が、(食い)殺される恐怖を煽るものからだと思う。
手島さよりは綺麗な皮膚をしているけれど、凄く顔色も悪いし、不健康に痩せている。それは、奇病を患っているゆえのものだろうか。
そんなあたしの病気説を、ゆるりと頭を横に振った須王が否定する。
「病気でも流行病(パンデミック)でもねぇ。恐らくこれは……ドラッグのせいだと思う」
「ドラッグ……麻薬!?」
あまりに意表を突かれて、声がひっくり返ってしまった。
「ああ。手島さよりはドラッグ中毒者だろう。しかも重度の」
「で、でもゾンビみたいになるドラッグってあるの?」
「棗から、海外でゾンビのようになるという脱法ドラッグがあると聞いたことがある。あいつ、元マトリ……麻薬取締官の上、内調でAOP追うのに海外にいたから、昔取った杵柄というか、そういう情報はすぐ耳に入るらしい」
「……さすがは棗くん。でも海外って怖いんだね……。海外にはバイ○ハザードパニックになりそうな、そんなドラッグ、あるんだ……」
あたしの顔は引き攣った。
やはりもぐもぐ、穴の中に引き籠もりたい。
「日本では広まってはいないが、飲んだら中枢神経をがつんと刺激され、残虐で攻撃的となるようだ。痛みを感じず、時にひとに食らいつき、海外でも、実際事件になっている」
ひ、ひぇぇぇぇ……。
「攻撃性はあるにしろ、彼女の意志は消し飛んでなかったから、まんまではねぇ……派生品なのか。そこらへんは、棗なり専門家に成分を調べさせねぇと、初見ではわからねぇな」

