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エリュシオンでささやいて
第3章 Dear Voice
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「あのさ、落ち込んでる?」
「……誰が。今俺がなにをしているのか見て言ってるのか?」
「黙々とシンセでなにかしているのはわかるけど、でもめちゃくちゃ凹んでいるように見えるけど。ちょっと、演奏前に痴話喧嘩はやめてくれよ」
「気のせいだ。痴話喧嘩にもならねぇよ」
「相当凹んでるね。……ねぇ、あんたが関係してるの? 柚の指が動かないということに。だから柚、あんなに怒っちゃったの?」
「………」
「あんたさ、言葉が足りないと思うよ。強引にいくより、もっと寄り添ってあげなきゃ。まだ強引にいける段階じゃないと思うけど」
「寄り添うと怒るし、……時間がない」
「だからって、やり方が一方的でガキ臭いんだよ。もっとさ、女心をわかってやれよ。どうせ柚が音楽に対して楽しそうにしてるから、調子乗って同じ船に乗せようとして、地雷踏んで撃沈したんだろうけど」
「……ゲホッ、裕貴、お前何者?」
「俺? 家族の女連中がどうしようもなく男運悪くてさ、無理矢理相談に乗らせられていたんだけれど、気づいたら俺、恋愛ご意見番よ。ただ俺の意見言ってるだけだけど、友達にも拝まれる始末。なんでも俺、恋愛成就の生き仏なんだって」
「………」
「あんたまで拝むなよ! ……ま、演奏が無事に終えれたら、お礼にアドバイスやるから。見てられねぇし」
「……要らねぇ。俺がなんとかする」
「本当に出来ると思ってる? あんた、やればやるほど墓穴掘ってね? 死にそうな顔するなって、強気で出たんだから強気のままでいろよ。なんで俺の前では素直なんだよ、あんたが素直にならないといけないのはあっち! 柚だろう!? この格好つけ!」
「くっ……十七に言われるなんて……」
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「やばい。ふたりのお面がないっ!!」
怒り発散とばかりにレンガ倉庫内走り回り、そしてようやくお祭りのような簡易的な屋台が出ているスペースを見つけたが、今時お面なんていうものは売られていないらしい。
疲れ果てて肩でぜぇはぁしていたあたしの目には、風船を子供に配ってる……りすとうさぎの着ぐるみが見えた。