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エリュシオンでささやいて
第14章 brighting Voice

「審査員の正体は日本の音楽界で名の知れた者達。そしてそいつらによって、あんたはカナリアどころか、玩具にされ続けた。あんたと同じ境遇の仲間として、上原碧もいるな? あんたのような上役の相手でなくとも」
どうしてここに碧姉が出てくるの?
「な、なぜ……」
手島さよりの声は、驚愕と動揺に掠れきって声になっていない。
それでも、否定はしていなかった。
――俺は、お前の姉の声を、組織にいたひとりの声と同じだと思った。
まさか……。
――……俺が聞いたのは、組織の命令をする方ではなく、飼われている女達の方だ。俺達のような傭兵としてではなく、その……性処理班だ。
手島さよりは、碧姉と共に慰め者になっていたと言うの?
だとすれば、そこは。
否、彼女達を抱いているあの審査員達は。
こんなところまで、非道なことをしているのは――。
「〝我らは永久の闇より汝を求めん〟」
それは組織で使われていたという、暗号のような合言葉。
それを聞いた途端に手島さよりの顔が強張った。
「エリュシオン」
立て続けに言葉を放つ須王に、手島さよりは逃げだそうとした。
その手をがしっと掴んでソファに座らせる須王は言う。
「俺はあっち側の人間じゃねえ。向こうの敵だ」
手島さよりがあたしを見るから、あたしもこくこくと頷いた。
彼女から警戒心は消えていないものの、逃げることはやめたようだ。
「なぜあんたの声が出なくなったのかは聞かねぇ。恐らくそれは、精神的ストレスなどという生やさしいもんが原因じゃねぇと思うから」
カタカタ、カタカタ、彼女の手が震えている。
顔は真っ青だ。
須王の言葉は、正しいんだ。
否定出来ないほど、なぜ須王が組織という言葉を口に出来ているのかを聞き返せないほど、彼女の目は恐ろしいなにかに瞳を揺らしていた。

