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エリュシオンでささやいて
第15章 Approaching Voice
裕貴くんも今日から学校だ。
きちんと制服を着ている。
「遅刻になるんじゃ……」
「大丈夫だよ、柚。クラスのグループLINEが来て、なんでも今日は11時登校だってきたから、柚と須王さんと姐さん下ろした後、学校に送って貰うように棗姉さんに頼んでいるんだ」
「……11時登校? 今の高校って、そんな中途半端な登校時間もありなの?」
あたしが首を傾げると、裕貴くんも同様に首を傾げる。
「いや俺も初めてなんだけれどさ。なんか学校側が緊急会議をしないといけないから授業が出来ないとか。だったら休みにすればいいのに」
「緊急会議? なにかあったのかしら……」
「まあ、学校いけば理由はわかるだろうけれどね。自習ではなくて、学校に生徒を近づけさせない理由」
裕貴くんは両肩を竦めて見せた。
あたし達の服装だけ見ていれば、日常に戻ったようで、ここ数日に起きたことがまるで夢の中の出来事のようだ。
「そういえば棗。朝霞は? 朝、連絡入れてみたんだろう?」
「ええ。危機は脱したけれど、依然目を覚まさないようよ。いまだ面会謝絶状態」
……でも、逃げてはいけない。
これは現実だ。
「医者曰く、このままずっと目を覚まさない可能性もあることを視野に入れろって」
「それは……植物状態になるっていうこと?」
思わずあたしは身を乗り出すと、棗くんがウインカーを上げてハンドルを右に切りながら言う。
「……もしくは、命尽きるか」
「……っ」