この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
エリュシオンでささやいて
第15章 Approaching Voice
*+†+*――*+†+*
久しぶりの木場、OSHIZUKIビルへの出勤だ。
毎日通っていたはずなのに、別会社に足を踏み入れたような空々しさを感じるのは――、知っている顔の社員がぐんと減り、知らぬ顔の社員が増えたからだ。
しかもその顔ぶれは、最後の記憶のものとは違っている。
いつの間にか、さらなる再入れ替えがなされていたようだ。
エリュシオンにプラスになる社員が入るのは一番だけれど、群れもしない新入り達の有能オーラのおかげで、生き残ったエリュシオン社員が強張った顔で萎縮している。
まるで、日の当たる世界から一気に転落して、地下生活を余儀なくされているような……政権交代の哀れみを感じてしまう。
社長は社長室にいるようで、須王は社長室に行ったきり戻って来ない。
女帝は、受付の場所から二階へと、机と持ち物が移動されていた。
つまりあたしと須王のところなのだけれど、あたしも須王も場所を変えられていたんだ。
あたしが所属していた育成課は前の社長の宣言通り、なくなっていた。
しかし、あたしは企画事業部内の転属ではなく、新設された企画推進部というところに配属され、プロモーション課のチーフとなっていた。
そして企画推進部の部長兼課長がなんと須王であり、部下に女帝がいる。
新HADESプロジェクトのために、形式的に新設された部課だということはわかるけれど、天才音楽家の須王が部課長で、あたしの部下が女帝というのが、中々に現実として受け入れがたい。
あたしはなにに役立てれるのだろう。
足を引っ張るしか出来ていない気がする……。