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エリュシオンでささやいて
第15章 Approaching Voice
パソコンはスタジオで使っていたものを持参し、ちゃんと棗くんから貰った、覗き見&ハッキング防止のソフトを走らせている。
さらには盗聴探索機で、怪しいものはないかチェック。
あたしと女帝は互いに顔を見合わせて、頷き合った。
演奏に関係なくとも、あたし達にも新HADESの売り出し方についてなど、色々企画を出したり、リストアップさせないといけない。
第一回目の進捗状況としての資料を、須王は社長に持っていった。
それでOKが出れば、さらに絞って具体的な形で進めていくことになる。
ただ不安もある。
あたしが今までしていたのは、歌手などを育ててフォローする仕事で、女帝は気遣いや鋭い指摘は出来るが、基本裏方で受け身の仕事が多かった。
そして須王は、依頼されて音楽を作ったり、演出を考えたりしてはいたが、実際の細やかなスケジュール調整などアシスタント的な動きはしていない。
王様だからね!
つまり、営業のお仕事を誰も経験していないのだ。
それについて須王は、コネで押し切ろうとしているけれど、HADESプロジェクトに対抗してきた朝霞さんのように、須王の反対派がいたら。
その裏にいる音楽業界の人達の圧力によって、どんなに須王に恩義を感じているひとですら、強い者に飲まれてしまうんじゃないかなと思うんだ。
それはあたしだけの不安で、須王は笑い飛ばすし、女帝も考えすぎだと笑うけれど。
それでもあたしに関わった人達が、あの無残な姿をさらした現場を何度も見ていたら、やはりそう思わずにはいられなくて。
どこから洩れるかわからない情報に備え、あたしなりにこれが駄目ならこっちへという、色々なパターンを考えている。
「柚、早瀬さん戻ってきた」
女帝の声で顔を向ければ、須王が会議室に行くように顎で促している。
女帝と共に、パソコンを持って会議室へ向かった。