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エリュシオンでささやいて
第15章 Approaching Voice
勿論、会議室に入ったら、すぐに盗聴器の探索。
こくりと頷くと、須王はどかりと椅子に座り、長い足を組んだ。
「新HADESプロジェクトは、来月末には動く」
「う、動くって、まさかデビューじゃないよね? 今、末だよ? あと1ヶ月で、すべてを手配するというわけ!?」
すると須王はぶっきらぼうに言う。
「ああ。社長都合だな、なぜかは頑として言わねぇけど。それまでにあいつらをまとめあげて、人様の前で演奏してもいいよう仕上げなければ……」
「いやいや、その前に。ボーカル! ボーカルは……」
ダークブルーの瞳があたしに向く。
「……HARUKA、でいきたい」
迷いない口調で。
「しかし早瀬さん。それは……っ」
女帝の言葉に、須王は薄く笑う。
「……ああ。歌えるHARUKAが、蘇ってくるのが前提の話だ」
感情論を抜きにすれば、1ヶ月で裕貴くんと大体同い年に見えるあの遥くんと同じ姿で、蘇ることが出来るものなのだろうか。
まあ、あの天使の歌声を持っているのなら、ある程度幼くても話題性にはなるかもしれないけれど、蘇ってすぐ使い物になるものなの?
歌が上手い歌手でも、ボイトレは念入りにするものだよ?
プロと、歌の上手い素人とは違うものなのだから。
須王も、荒唐無稽な話に賭けているのはわかっているのだろう。
苛立たしげに目を細めて、天井を睨み付けている。
「もし仮に、遥くんがあの姿で蘇ったとしてだよ? あたし達を記憶しているとしてだよ? 生まれてたった1ヶ月で……成長出来るもの?」
「問題はそれだけじゃねぇ。もしもオリジナルが入院している遥であるのなら。遥に万が一のことがあれば、次のHARUKAはねぇかも」
「え?」
ダークブルーの瞳は、憂えている。
「社長は既に決定済みだった。そこが俺にはひっかかった。もしも、俺達への抵抗勢力がその情報を聞きつけていたら。真っ先に狙われるのは遥だ」