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エリュシオンでささやいて
第15章 Approaching Voice
『……ゾンビのように、ひとに食らい付いたり、奇声を発したりするらしい。ねぇそれって……柚が言っていた、手島さよりと同じだよね?』
「な……っ!」
須王が厳しい面持ちで言った。
「つまり、複数の同じ高校の少年少女がポム……ドラッグ症状を出したから、ドラッグが蔓延していると踏んだわけか。学校側は対策を考えるために会議をして、そして生徒達の尿検査は……どの程度ドラッグが拡がっているのか、調べているんだ」
「え、でもなんで高校生が……」
「わからねぇけど、普通まず疑うべきは、高校よりも、同じく訪れたシークレットライブ先……HARUKAやその関係者じゃねぇか?」
そうだよね。そう思う。
「もしかすると……。HARUKAのことをもみ消せるだけの存在がいるのかもしれない」
「でもさ須王。音楽業界ではなくて、警察が来ているんだよ? それと音楽業界と警察が繋がっているということ?」
「実際のところは、どこからのコネで動いているのかはわからねぇが。……あのクソ女が、裕貴の家族に、記憶を消す柘榴の匂いを振りまいたのは……なにか意味があることかもしれないぞ?」
あたしは絶句する。
裕貴くんとご家族の話から、さっちゃんが記憶操作をしている対象に、裕貴くんのお父さんは入っていなかった。
それでも実際のところは、どの程度までさっちゃんが裕貴くんの家族に侵蝕しているのかわからないし、皆だって記憶が曖昧だ。
もしも警察のトップも知らぬ間に利用されているならば、これほど恐ろしいこともない。
そして――。
……なにをしているのかはわからないけれど、別の遥くんはもう動いている。新たな彼は、音楽を一緒にしたいと泣いたあの彼とは……違うのだろうか。