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エリュシオンでささやいて
第15章 Approaching Voice
「他にも入院中の学生を、保護者だと連れ去るケースが多発。ライブ会場の規模からすれば、現在入院している人数は圧倒的に少ない。入院者に詳しい事情を聞きたくても、意識混濁中。医療機関としてはポムにしろエンジェルヘッドにしろ情報が伝わっていないから、新手の感染病(パンデミック)として戦々恐々らしいわ」
「棗くん。そのゾンビ化っていうのは、ライブ会場で皆が一斉になったわけじゃなく、それが終わってからということ?」
「ええ。解散した後に。ひとによっては自宅で、寄り道先で。似たような時間帯だったこと以外、場所に関してはばらばら」
「だったら、ライブとゾンビ化の因果関係が弱いから、HARUKAではなく同じ高校だという理由で裕貴くん達は拘束され、検査させられているということ?」
「とも言えるわね。あわよくば、そこから〝天の奏音〟についての情報を引き出せないか……恐らくは裕貴も聞かれて、ぶちギレているでしょうけれど。ドラッグをしていない子達にはいい迷惑よ」
すると須王が口元を吊り上げて言った。
「……警察当局は、高校生を拘束してまで、HARUKAではなく……、宗教法人を隠れ蓑にしているカルト集団の中にメスを入れようとしているわけだ?」
須王の笑いに、棗くんは頷いた。
「裕貴の学校だけが調査対象になった理由はわからない。だけど、どうも警視総監クラスの力が働いているようね」
警視総監――つまり、裕貴くんのお父さんの力が?
普通、息子がいる学校ならば、調査対象から外さないだろうか。
裕貴くんからのLINEによれば、お父さんと連絡がとれないみたいだけれど、なにも話さないのは、単純に守秘義務だから、なのだろうか……。