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エリュシオンでささやいて
第15章 Approaching Voice
車は裕貴くんのお迎えに向かっている。
裕貴くん、都心にある名門私立高校に通っているんだよね。
イケメンだし、ギター上手いし、しかもなにげにお坊ちゃま。
これは絶対モテてそう。
……だけど、好意に気づいていなさそうだけどね。
恋愛よりも、興味あるのは音楽。
憧れの須王さまの手ほどきを受けているんだから、余計。
裕貴くんのことを考えて思わず笑みを浮かべていると、あたしのスマホが震えた。
「うわ、以心伝心! 裕貴くんからだ」
裕貴くんからのLINEだった。
「……以心伝心ってなんだよ。おい、柚。裕貴と以心伝心って……」
「その言葉の通りでしょう? 須王、高校生相手に嫉妬は見苦しいわ」
棗くんにぴしゃりと言われて、須王は口を噤んだようだ。
「ええと……」
『は~、くたくた!ね、柚は珈琲にミ
ルクを入れるっけ?それってさ、
カフェオレって言う?珈琲
を知らない奴らが、それは
カフェラテだって言い張って。よ
く考えてみると、違いがわからず。
にんきはどっちなの?
んー、暇だ、暇!い
しきしないようにし
ても、暇なのだ~!』
「あいつはなにを柚に言ってきてるんだ」
須王がぶちぶちと独りごちている。
「きっと、暇で仕方がないんだよ。と……また来た。うお、全部平仮名ばかりだから読みにくいな。どれどれ……」
『ながくかかって、たいくつだー!
にくがたべたいよー!
かいてんずしでもいい~!
おなかがへってしにそう。お
かし、もってきてない
し。ひもじい、ひもじ
い~!』
……空腹の訴えが、なにか切実だ。
裕貴くん、成長盛りで食いしん坊だし。