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エリュシオンでささやいて
第15章 Approaching Voice
裕貴くんの訴えはまだ続いた。
『だれか、なにかをくれー!
れもんのキャンディーあったよね。あれ
ももってこなかったからさ…。
もうマジに空腹で頭ぼんやりする。
どうしよう…。ちか
ら入んねー。
なにか~!迷える子羊に、合
いの手を』
……裕貴くん、合いの手ではなく愛の手だよ。
思わず吹き出してしまった時、画面を覗き込んできた女帝が、ため息をついた。
「……裕貴、全体的に、なにおかしなところで改行しているのかしら。読みにくいわ。そこまで急いで入力する内容でもないのに」
確かに、なにか焦っているような気がする。
余裕がないというか、一方的に言葉を投げているのが、彼らしくない。
「お腹の空きすぎなんじゃ?」
そうあたしが呟いた時、須王が堅い声を出して言った。
「……柚、貸せ」
手を出しながら。
「え?」
「いいから、早く!」
慌てて須王にスマホを渡す。
するとそれを受け取った須王は、低い声で言った。
「棗、遥の病院!」
「了解」
棗くんが大きくハンドルを切り、あたしと女帝は端っこに転がった。
「な、なに……」
「裕貴からのメッセージだ」
「さすがにそれはわかるけど……」
あたしのLINEに来たんだし。
「遥を見て来いっていう」
「ええええ!? どこに!?」
ぽいとスマホが返された。
「一番左の列を上から読め」
『は~、くたくた!ね、柚は珈琲にミ
ルクを入れるっけ?それってさ、
カフェオレって言う?珈琲
を知らない奴らが、それは
カフェラテだって言い張って。よ
く考えてみると、違いがわからず。
にんきはどっちなの?
んー、暇だ、暇!い
しきしないようにし
ても、暇なのだ~!』
「『遥を確認して』……?」