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エリュシオンでささやいて
第15章 Approaching Voice
 
『ながくかかって、たいくつだー!
にくがたべたいよー!
かいてんずしでもいい~!
おなかがへってしにそう。お
かし、もってきてない
し。ひもじい、ひもじ
い~!』 

「『なにかおかしい』……って、裕貴くんの環境が!?」

『だれか、なにかをくれー!
れもんのキャンディーあったよね。あれ
ももってこなかったからさ…。
もうマジに空腹で頭ぼんやりする。
どうしよう…。ちか
ら入んねー。
なにか~!迷える子羊に、合
いの手を』

「『誰も戻らない』……? え、同級生達、どこかに連れられてるの!?」

「裕貴は今、スマホなどが監視されている状況にあるんだろう。打てたということは、没収されているわけではねぇんだろうが」

「監視って……警察に!? え、検査してドラッグに無関係だったら、解放されるんじゃ……」

「どうも違うな、これは」

 ミラー越し、須王が剣呑に目を細めたのが見える。

「もしかして警察ではなかったのかもしれねぇ。もしくは、入り混ざっていたとか、後から来たとか。どこの奴らとまでは言わねぇが」

「……え?」

 どくん、と心臓が不穏に跳ねた。

 ドラッグ側の、それはたとえば〝天の奏音〟や、組織……ということ?

 ミラーから垣間見る須王の表情は、その予想をしていることを裏付けるように、厳しいものだった。

「裕貴は、連中の話を盗み聞きくらいしたのかもな。遥をどうこうしようという。少なくとも、裕貴が危険を感じるくらいには裕貴の置かれている環境はよくねぇ」

 裕貴くん、大丈夫なのかな。
 凄くハラハラしてしまう。

「柚。次のものが左列になるように文を作れ」

 須王に言われて、あたしが作ったのは――。

『むかつくね。
かえってこないなんて。
えーと、戻ってきたら
にくをたっぷりあげる。
いくらかかってもいいよ。
くえるだけ。

にんにくは必要?
げんきになれるけど。
れんらくまって
るよ。はやく
かえってきてね』

 ……センスがない言葉の羅列に、速攻返事が来た。

『うん』

 ただ一言。
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