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エリュシオンでささやいて
第15章 Approaching Voice
ここはどこ?
須王はどこにいるの?
暗闇にあたしは悲鳴を上げた。
助けて。
この漆黒の闇は気が狂いそうなの。
ねぇ、助けて!
ここから出して!
――では、どちらかを選ぶがよい。
だから。
だからあたしは――。
なにかが足元に転がってきた。
あたしは見えないままにそれを手に取る。
すると暗闇に光明が差した。
――その天使は、お前が……たのだ。
両手にあるのは、恨めしいという顔をした天使。
闇に浮かび上がるのは、椅子に座った天使の……頭なき身体。
ベッドノウエニハ、カラダナキアタマ――。
――お前のおかげで、それは……続ける。
ハルカクンノカラダハドコ――?
――へるまふろでぃとす
突如思い浮かんだ呪文のような言葉に、恐れを成したあたしは絶叫を上げて、闇雲に駆けた。
「柚!? おい、柚!」
怖い、怖い、怖い、怖い!
「柚! 落ち着け! 柚!」
夢か現かわからないまま、奥に向けて走ったあたしは、須王に抱きしめられてようやく現実世界に帰って来る。
……そう、帰らずにはいられないほどたくさんの視線を感じたからだ。
それは――まるでSF。
まるでファンタジー。
旧エレベーターが近くにあると思われていた奥の部屋には、壁一面にびっちりと――遥くんがいたのだ。
一体一体、水槽のようなものに入った、全裸の遥くんが。
またあたしの意識が混濁する。
――へるまふろでぃとす
幻の呪文に、恐怖と戦慄がもたらされる。
そう、こんなもの夢でしかありえない。
「遥は……両性具有……?」
女の胸を持ち、男の下半身を持つ遥くんばかりなんて。