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エリュシオンでささやいて
第15章 Approaching Voice
「……わかった。あの頭に振り回されない。冷静になる」
「よろしい」
須王は笑って、あたしの頭を撫でた。
そして話を続けた。
「わかったものがあるとすれば、不死身だとか生き返ったとか、そういうオカルト的な理由以外にも、既に量産されていたから、HARUKAが次々に出現出来ると説明が可能になったということ。もしかするとあの水槽の機械や水が特殊だから、記憶を共有出来るのかもしれない。あくまでまだ推測だが、その科学的な立証については棗が扱っているのが得意分野だろう」
またもや棗くんの出番か。
でも棗くん、メインの仕事があるはずなのに、なにかいつも使いっ走りのようで不憫に思える。
「お、棗から電話だ」
須王は震えるスマホを取りだした。
「もしも……」
『早瀬さん!?』
それは、悲鳴のような女帝の声だった。
『棗が発作みたいのを起こしているの。ねぇ、どうすればいい!?』
あたし達は忘れていたんだ。
棗くんは強くても、心に深い傷を負っていることを。