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エリュシオンでささやいて
第15章 Approaching Voice
 

 あたし達はタクシーを拾って、急いで裕貴くんの学校へ向かう。

 女帝と棗くんは、裕貴くんの学校目前のところにいたらしい。
 車を停めたところで棗くんのスマホに電話がかかってきて、応答した棗くんが突然発作を起こしたようだ。

 須王は、棗くんが舌を噛み切らないように、女帝の持っていたタオル地のハンカチを棗くんの口に入れるように指示をした。

『でも棗……体を硬直させて、びくんびくんと痙攣しているの。ゾンビになりそう……』

 ああ……。
 緊急事態であるというのに、妙に納得してしまった。
 棗くんの発作が強くなれば、確かに手島さよりのような感じになる。
 ……てんかんを超えた、極度の筋肉の硬直が現れれば。

 僅かにそれがひっかかりはしたけれど、それがなにかに結びつく前に、須王の慌てた声で我に返る。
 
「三芳、棗のバックでもポケットにでも、小瓶に入った薬はないか」
『薬、薬……。ない、ないわ。小瓶……もしかしてこれかしら!』

 よし、あった!

「だったらその薬を、二錠……いや三錠、棗の口に放り込め。効かなかったら少しずつ増やせ」
『放り込めって……ハンカチ取ろうとしたら歯をガチガチ……』
「血だらけになっても、棗を助けてくれ!」

 須王の悲鳴のような声に、女帝は従ったようだ。
 電話口から、悲鳴や怒声が聞こえる。

『な、なんとか三錠飲ませて、また蓋をしました……』

 その声は覇気がない。
 かなり、大変だったんだろう……。
 お疲れ様でした。
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