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エリュシオンでささやいて
第15章 Approaching Voice
「待てよ。病院から出たあの道には、やけに黄色の車が多く停まっていたな」
須王は道路に目を走らせ、そう呟いた。
「黄色?」
「ああ、車体だ。柚色と言ってもいい。俺達が乗ったのも、その色だ」
そうでしたっけ……。
そう言われればそんな気もするけれど、乗った時は棗くんの一大事にそれどころじゃなかったのだ。
そんなところに柚色を使わないで欲しい。
「ということは……強制暗示、か」
須王は怜悧な目を細めた。
「強制暗示?」
「ああ。もし俺が敵側で、俺達を必ず捕まえようとするのなら、俺が考え出したルートに乗せるために誘導して罠を張る。今回の場合、確実にタクシーに乗せるための必然性は……くそっ、棗だ」
須王は悔しげに舌打ちした。
「俺達が棗の元に必ず駆けつけるようにするために、棗がターゲットになったんだ」
「え……」
確かに、女帝から電話がかかってきて棗くんの話を聞いて、慌ててタクシーに飛び乗った。
「となれば、向かう先は学校に固定される。そういえばタクシーに乗った時、無線が流れていたな」
「そうだっけ……?」
「ああ。行き先を言っても、運転手の反応が薄かったのは、暗示がかかっていたのだろう」
須王さん、あなた顔色変えて電話していたでしょう?
なぜ電話を聞いているだけのあたしは、注意力がないんだろう。
「俺達の動きは見張られていて、俺達を黄色いタクシーに乗らせようとした。となれば、タクシー会社が組織と関係があるのかもしれねぇな。俺達が黄色いタクシーのどの運転手の車に乗ろうとしているのかはわからねぇだろうから、黄色いタクシーに乗ろうとしたタイミングで、見ていた誰かが、付近の運転手に無線を入れるように指示したのかもしれねぇ」