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エリュシオンでささやいて
第15章 Approaching Voice
「え、だったら一斉に無線が入ったということ? 他の黄色いタクシーも暴走予備軍だったの?」
「可能性の話な。暗示の中身はわからねぇが、今回、裕貴の学校名がキーワードになっているのは間違いないだろう。それで俺達だと特定出来るから」
「ええええ……。そんな簡単に、あんなことをしでかすことができるの?」
「AOPだって記憶を操作する」
それを言われたら、なにも言えない。
「AOPでなくとも、たとえば会社で、サブリミナル効果のある映像や音を聞かせるとか、強制暗示の方法はある。普段表に出ないようにすれば、誰からも気づかれることもない」
「あたし、黄色いタクシーは乗らないようにする……」
目立つ色だから拾いやすいと思ったけれど、目立つゆえに利用されるのはまっぴらご免だ。
その後、女帝に連絡をとって、ようやく車を見つけた。
女帝はあたし達を見つけると、助手席から飛び出して潤んだ目を見せる。
「棗、まだびくびくするの。シートベルトつけたままにしているけど、どうしよう……」
「……俺が行くから大丈夫。お前らは外に……と言いたいところだけれど、後ろに乗ってろ」
あたしと女帝は抱き合うようにして、助手席に入った須王を見た。
須王は、ハンカチを咥えて悶える棗くんを両手で抱きしめ、シートベルトを外した。
「棗、俺がわかるか!?」
棗くんは焦点が合っていない目で、なにか興奮しているようにふーふーと言っている。
いつも毅然としていた棗くんの姿に、あたしは泣きそうになる。