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第10章 拡大と安定

「・・朔夜叔父はどうしますか？
叔父とて仕事がある筈」


「顔も見ないで帰れるか‥
紀永、お前こそ仕事はどうなんだ？」


「私？
数日空けても、不都合がある仕事はしてないね」


「自信満々か‥
こっちは‥‥荒れるだろうな・・・」


社長不在は何時もの事だが、専務不在はあまり無い。



「皇‥田野倉‥‥
あの２人が余計な事をしてくれたおかげで・・」


待合室の椅子に座りながら、握り拳に力が入る‥
幾ら疎遠とは言え親子だ、父の考えた事くらい分かる。

父は‥自分の命と引き換えに、皇を牽制しようと思ったのだろう‥
だとしたら、父の意志は私が継ぐしか無い。


でなければ、命まで賭けた父の行動が無意味になる。



「・・・
何時になく怒っているな紀永‥
気持ちは分からなくもないが、今のお前に何が出来る？」


「私とて怒る事くらいある‥
何か‥‥本社改革でしょう朔夜叔父・・
基盤は既に出来ている、それに本社に入れと言うなら入ろう、ただし私流にやらして貰うが」


「本気だな？
皇と田野倉を落とすのか？」


「今回の件を餌に‥
最低でも皇のポジションは下げたい、それに発言権も‥‥
餌の裏付けの為なら、子飼いを使って、幾らでも集めてやる・・」


「早乙女外戚を飼い殺しか？」


「今の皇の役所は、そんな程度しか無い‥
発言権だけで経営手腕も、ＩＴ系も分からない副社長など不要‥‥
覚える努力さえしなかったんだ、飼い殺しで十分」


冷酷になるなら、とことん冷酷になれ‥
それで本社の道が開けるのなら、私は冷酷非道の早乙女直系を演じよう。


父の意志を無視した代償・・


私が父の代わりになれば良い・・



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