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禁断背徳の鎖外伝・73億分の奇跡
第10章 拡大と安定



看護婦に連れられて入るICUの中・・


せわしなく動く医師看護婦‥
その一角に、父が居るベッドが・・・


医療機器、点滴、酸素‥全身に付けられている長い線‥‥それが今の父をかろうじて生かしている。



「・・・・・来て・・・いたんだね・・・」


「当たり前です・・」


見るからに顔色の悪い父の姿‥
覚悟はしていたが、いざ現実を突き付けられると、やはり辛い。



「・・・・すまなかった・・紀永・・・」


「父さん?」


用意して貰った椅子に座りながら、父の言葉を疑問に思ってしまう。



「・・私は・・・何も出来なかった・・・紀永があれほど、産まれた娘に拘っていた事を知っていたのに・・・助けてやる事が出来なかった」


「それは・・
父さんのせいじゃ無い‥‥」


「でもね・・
私が会長に少しでも助言していれば・・・此処まで拗れる事は無かった・・・・今ではそう思うよ・・・」


「・・・・・」


苦しい筈なのに、変わらず穏やかに話す父・・



「・・・会長を恨むなとは言わない・・・だが、会長には会長の思惑があった・・・私も後で聞いたのだがね・・・・・紀永の悪い事にはならない・・・・・だから心配はない・・・」


「それは・・・」


祖父と父‥一体何を話したのだろうか?



「心配は無い・・・全て紀永の思い通りになる・・・・・だけど、それで紀永に苦労も掛けた・・・・・それが私には辛かったのだよ・・・・・分かっていても話せず、会長の命だとしても、なにも紀永にしてやれなかった私がね・・・」


「・・・父さんは父さんです・・・
言われた通りに、暇を見付けて本宅に行けば良かった・・」



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