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禁断背徳の鎖外伝・73億分の奇跡
第10章 拡大と安定



『命を賭けたからこそ、押し通したと思わんか‥
安定を望んだ洸紀の意志だ、お前が口を挟む事でも無い』


軽々しく命を賭けると‥
私はそれで、どれだけのものを失ったか‥‥


私の出産の為に、寿命を縮めた母‥


私の一言で命を失った美里‥


その美里が、最後の命で産んだ娘まで‥


そして、今父がまた‥‥


私はどれだけ失えば‥
考えてもと、普段は心の奥底にしまってはいるが、今の父の状態を見ていると、しまった心が浮き出してしまう・・


何処まで失えば終わるのかと・・・



「・・・・紀永・・・」


「はい‥‥」


「辛い顔をしている・・・・・」


「それは‥‥」


こういう時は無表情に徹している筈なのに、父は私の少しの表情の変化まで読み取ってしまう。


何故か父だけが‥
やはり親子だからなのだろうか??


父の‥‥点滴や医療器具が付いている手が動く‥
私に触れようとしたのか‥‥だが、繋がれた物が邪魔をして、手は私のところまで届かない。


だから‥‥私の方から父の手を握る・・



「心を・・・内に秘めるからね紀永は・・・もう少し自由でも・・・良いのではないのかい?」


「・・・・・
此処まで来たら、もう性格です‥
今更変わりませんよ」


「・・・そうでは無く・・・仕事以外・・・紀永にだってプライベートはある・・・それまで潰して欲しくは無い・・・」


「プライベートは‥‥普通です‥」


本当に普通なのか?
普通の基準が何処にあるのか‥そこが少し曖昧にはなっているとは思う。


それにしても、父の手はこんなに細かっただろうか?


子供の頃触れた父の手は、もっと大きくて‥‥
違う‥私の方が成長してしまったから‥だから、こんなに細く小さく思ってしまうのだろう。


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