この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断背徳の鎖外伝・73億分の奇跡
第10章 拡大と安定
『命を賭けたからこそ、押し通したと思わんか‥
安定を望んだ洸紀の意志だ、お前が口を挟む事でも無い』
軽々しく命を賭けると‥
私はそれで、どれだけのものを失ったか‥‥
私の出産の為に、寿命を縮めた母‥
私の一言で命を失った美里‥
その美里が、最後の命で産んだ娘まで‥
そして、今父がまた‥‥
私はどれだけ失えば‥
考えてもと、普段は心の奥底にしまってはいるが、今の父の状態を見ていると、しまった心が浮き出してしまう・・
何処まで失えば終わるのかと・・・
「・・・・紀永・・・」
「はい‥‥」
「辛い顔をしている・・・・・」
「それは‥‥」
こういう時は無表情に徹している筈なのに、父は私の少しの表情の変化まで読み取ってしまう。
何故か父だけが‥
やはり親子だからなのだろうか??
父の‥‥点滴や医療器具が付いている手が動く‥
私に触れようとしたのか‥‥だが、繋がれた物が邪魔をして、手は私のところまで届かない。
だから‥‥私の方から父の手を握る・・
「心を・・・内に秘めるからね紀永は・・・もう少し自由でも・・・良いのではないのかい?」
「・・・・・
此処まで来たら、もう性格です‥
今更変わりませんよ」
「・・・そうでは無く・・・仕事以外・・・紀永にだってプライベートはある・・・それまで潰して欲しくは無い・・・」
「プライベートは‥‥普通です‥」
本当に普通なのか?
普通の基準が何処にあるのか‥そこが少し曖昧にはなっているとは思う。
それにしても、父の手はこんなに細かっただろうか?
子供の頃触れた父の手は、もっと大きくて‥‥
違う‥私の方が成長してしまったから‥だから、こんなに細く小さく思ってしまうのだろう。
・