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禁断背徳の鎖外伝・73億分の奇跡
第10章 拡大と安定
「紀永‥お前は大丈夫か?」
「・・・
大丈夫‥です‥‥
もう何度目ですかね、身内の葬儀に参列するのは・・・」
「・・・そうだったな・・・」
私の方が見ていられない程の、朔夜叔父の憔悴ぶり‥
血の繋がった兄弟‥朔夜叔父に取っては、初めて血の繋がった身内を亡くした事になる。
(叔父の奥様が亡くなった時でさえ、此処まで憔悴はしていなかった・・)
もう随分前になるが、朔夜叔父は妻を病気で亡くしている。
その時でさえ、気丈に振る舞っていた朔夜叔父が、父‥‥自分の本当の兄になると、此処まで落ち込むものなのか??
私の方は‥覚悟はしていたから、まだ普通を保っている‥叔父程落ち込んではいない。
(・・・違うか・・・)
動揺していない訳では無い‥
辛い悲しいという気持ちもある‥
ただ、父の最後の一言‥
『紀永ありがとう』
この一言で、私は冷静さを残しているのかも知れない‥
父の"ありがとう"という言葉だけで・・・
身内だけと言っても早乙女だ、それなりの人数は来る‥
後で公的なお別れ会は、本社主体でやるようだが、私は出ない‥そうなるように今調整中。
不用意に表には出ない‥
これが私の早乙女として生き抜く処世術であり、ずっとこうして生き抜いて来た。
今更、このスタイルを変える気は無い‥
本社の方も、社長室の回線だけを私の事務所に繋ぎ、父と同じく私も外から本社社長をやるつもり。
だが、この葬儀だけは外せない‥
父の顔が見える最後の機会。
会長が居ようが、外戚が居ようが、最後まで父に付いていてあげたい‥‥これは私の意志だ。
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