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禁断背徳の鎖外伝・73億分の奇跡
第12章 虚偽と真実
16才で絵を描く事を止めた‥
それから12年‥他人の絵に見えても、おかしくは無い程に時は経っている。
「・・・・・」
ベッドから立ち上がり、絵に近付いて見る。
「・・・
こんな描き方‥色使いをしていたか??」
絵自体は何の変哲も無い、夏の景色を描いた風景画に過ぎない‥
ただ‥私はこんな風に描いていたのだろうか?
この絵を完成させるのに必死だったのは覚えている‥
だが、どうやってがもう思い出せない。
どう構図を決めて、どう色を選んで、どう塗り重ねて行ったか‥
既に捨てた過去だと、思い出と共に記憶から排除していたらしい。
「・・・・・
こんな風に描いていたとは‥
よくこれで入選出来たもの‥‥と、今の私では思ってしまうのか・・・」
経験と価値観の相違‥
あの頃と今では、随分変わってしまった感覚‥逆に純粋さを失ったとも言うのか??
「・・・数枚と言っていた・・・」
父は数枚抜いたと‥
後は何処にあるのだろう??
ベッドルームにはこれ1枚、表向きの場所に置くとも思えない‥だとしたらバスルームかクローゼット‥‥
「バスルームはあり得ない、絵に取っては最悪の環境‥
残るは‥‥クローゼット‥‥」
私ですら、立ち入った事は一度も無いクローゼットを開いて見た。
「意外に広かったのか‥‥」
見た目以上に奥があり、広々としたクローゼット内‥
しっかり整理されていて、見覚えがある服や小物も多々。
「流石に此処は物が多い‥‥」
外がシンプルなだけに、殆どの物をクローゼットに収めていたのだろう‥
衣服から小物、生活用品‥所狭しと並ぶ父が残した物・・・
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