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禁断背徳の鎖外伝・73億分の奇跡
第12章 虚偽と真実
久しぶりに見る景色‥
何も無い景色とも言うか‥
広い庭と、その先に見える付属高の建物の一部だけ‥此処から見えるのはそんな程度。
「・・・今更だ」
祖父が倒れたと聞いて慌てて来たというのに、此処は何1つ変わらない。
時が止まった感覚‥
違うのは・・・私のこの姿ぐらい・・・
本宅という事で、誰に会うか分からないと、表向き用の格好で来た‥
少々無駄だった気もするが、これから誰かが来るかも知れない。
「どうするべきかね‥」
様態が安定しているのなら、このまま帰るのも1つの手‥
祖父と会えば、また喧嘩越しになるかも知れないのだ‥‥
流石に病人相手に、そんな物言は不味いと、私だって思ってしまう。
「失礼します‥
こちらに居られましたか紀永様」
「・・・・何か?」
祖父の‥会長の執事‥
この本宅を取り仕切る、私の子供の頃から居る、会長の良き片腕‥‥
「会長が、来ているのなら顔を見せるようにと仰っておられます‥」
「・・・
そうか‥後で伺うと伝えておいてくれ‥‥」
「畏まりました‥」
これで逃げる理由は付かなくなった‥か‥‥
それにしても、話は終わったというのに、執事の方は一向に立ち去る様子を見せない‥まだ用があるのか??
「・・・まだ何か?」
「・・・いえ
ただ、随分お変わりになられた‥そう思いまして‥」
「10年だ‥
人も変わる‥違うか?」
「仰る通りです‥
会長に似られました、紀永様は‥‥」
「煽ては結構‥
これ以上、私の方に用は無い‥」
「申し訳ありません‥
では失礼致します」
静かに出て行く執事を見て、私の方は少々渋い顔‥
子供の頃から、私はあの執事が苦手で‥必要以外話す事もしていなかった。
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