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第9章 痛手と餓え

「・・おっと、本社重役達の登場だ…
目立ちたくないので、俺は引っ込みます、では社長これで……」


「ああ・・・」


なるほど、私と居れば目立つと言いたい訳か…
幾ら傘下とは言え、本社の方が上‥これはこれはどうしようもない。



(・・・
揃い踏みか…
まさか会長に社長も来ているとは‥挨拶しない訳にもいかないだろう)


会長はともかく、社長‥父洸紀まで来ている…
幾ら本宅に帰らないとは言え、父の顔を見て知らん顔も出来そうに無い全く。



(極力大人しくしているつもりだったのに…)


基本的に、こういうパーティーは壁の花‥あまり目立つ事はせず、一定時間居るだけというのが普段の私。



(やれやれ・・)


仕方無しと定位置の壁から離れ、壇上近く‥重役達が揃っている場所へと移動。



「・・・
お久しぶりです‥‥父さん‥」


父に声を掛けたのは、何年振りだろうか？



「紀永か‥‥」


「はい、最近体調の方は？」


「そこまで悪くは無い、こうしてパーティーにも出て来ているのだからね」


「それは良かったです」


生来あまり丈夫では無い父…
少し無理をすればベッドの住人、早乙女の悪い方を継いでしまった。



「お前は元気そうだ…
たまに朔夜から話は聞いているよ‥毎回無茶な事ばかり持ち込んで来ると……」


「無茶とは…
しっかり社の業績アップにはなっている筈ですが？」


祖父とは違い穏やかな父、私のプライベート部分は父に似たとは思う…
母の事は聞いた話程度しか知らない、母も早乙女の悪い方を継ぎ、私の子供の頃に亡くなってしまっている。



「まあ…
朔夜はお前の事が好きだから、無茶でも聞いてしまうのだろう…
私が構う事が出来ないから、朔夜はやりたい放題‥昔は随分弄られていた」


「今も変わっていませんよ朔夜叔父は…」


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