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禁断背徳の鎖外伝・73億分の奇跡
第9章 痛手と餓え



「たまには普通に話をしたいね…
近くまで来る事があったら本宅に寄ればいい‥‥良いね紀永」


「・・・機会がありましたら‥‥」


本宅には近寄りたく無い、敢えてずっと避けて来た‥
父が嫌いという訳では無い、あの本宅の主人が嫌い‥‥祖父が居る限り、余程の事がないと行く気にはならない。


この考えが、後々後悔する事になるのだが、今の私は祖父に対する嫌悪感しか無かった。



(残るは田野倉と皇…
無視して構わないだろう、それに朔夜叔父は忙しそうだ)


田野倉はともかく、皇は私とは話したく無い筈…
美里の事は私のせい‥そう思っている皇は、私と話そうとはしない‥…仕事上でも……


そして、主催という事で朔夜叔父はせわしなく右往左往、声を掛けるどころではなさそう…
挨拶はこんなものでいい。



「では父さん私はこれで…」


「此処に居ても構わないのではないかい紀永…
重役には名を連ねているのだから」


「無役ですので…
それに私は本社の外、重役と言っても名ばかりで役には立ちそうにありません‥‥父さんご自愛を……」


「・・・そうか」


少しだけ寂しそうな顔をする父に一礼して、壇上近くから遠ざかる…
あまり一緒に行動をしていると、変な勘ぐりが入る‥それを防ぐ為。



(・・・
好きにしろか・・・)


会場の隅に戻って壁に背を付けながら、先ほどの祖父の言葉を思い出す。



(相変わらず腹の内が読めない・・・)


本社がノウハウを欲しがっていると言う割には、好きにしろと言う。


何を思ってそう言うのか?
全く意図が掴めない。



(全く‥腹黒い祖父だ…)


経営手腕は本物だが、腹の内は身内であっても見せる事は無い…
18年本宅に住んでいた私でさえ、祖父の本音など聞いた事すら無い程。


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