この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断背徳の鎖外伝・73億分の奇跡
第9章 痛手と餓え
「たまには普通に話をしたいね…
近くまで来る事があったら本宅に寄ればいい‥‥良いね紀永」
「・・・機会がありましたら‥‥」
本宅には近寄りたく無い、敢えてずっと避けて来た‥
父が嫌いという訳では無い、あの本宅の主人が嫌い‥‥祖父が居る限り、余程の事がないと行く気にはならない。
この考えが、後々後悔する事になるのだが、今の私は祖父に対する嫌悪感しか無かった。
(残るは田野倉と皇…
無視して構わないだろう、それに朔夜叔父は忙しそうだ)
田野倉はともかく、皇は私とは話したく無い筈…
美里の事は私のせい‥そう思っている皇は、私と話そうとはしない‥…仕事上でも……
そして、主催という事で朔夜叔父はせわしなく右往左往、声を掛けるどころではなさそう…
挨拶はこんなものでいい。
「では父さん私はこれで…」
「此処に居ても構わないのではないかい紀永…
重役には名を連ねているのだから」
「無役ですので…
それに私は本社の外、重役と言っても名ばかりで役には立ちそうにありません‥‥父さんご自愛を……」
「・・・そうか」
少しだけ寂しそうな顔をする父に一礼して、壇上近くから遠ざかる…
あまり一緒に行動をしていると、変な勘ぐりが入る‥それを防ぐ為。
(・・・
好きにしろか・・・)
会場の隅に戻って壁に背を付けながら、先ほどの祖父の言葉を思い出す。
(相変わらず腹の内が読めない・・・)
本社がノウハウを欲しがっていると言う割には、好きにしろと言う。
何を思ってそう言うのか?
全く意図が掴めない。
(全く‥腹黒い祖父だ…)
経営手腕は本物だが、腹の内は身内であっても見せる事は無い…
18年本宅に住んでいた私でさえ、祖父の本音など聞いた事すら無い程。
・