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青い残り火
第7章 第7章
名前が呼ばれ、一人ひとりに採点済みの解答用紙が返却されていく。

「藤村一馬さん」

「はい」

教卓に近づく一馬を見ることなく、西崎は次の名前を確認している。

「この正しい解答と見比べて、採点に間違いがあったら持ってきてください」

眼鏡越しに西崎の視線を受け取った。

「はい」

だがそれだけだった。

「森谷さん」

「はーい」

西崎を意識し始めてから、一馬は小さな失恋を繰り返していた。椅子にどんと腰をおろし、窓の向こうの空に目を向けた。人の手を離れた赤い風船が、ゆっくりと風に漂っている。無意識にその行先を追った一馬は、何の感慨も持たないまま解答用紙を机にしまった。

辞書にとって俺は、あの風船でしかない。

早く目を覚ませと自分を叱咤する。
世の中に女が何人いると思う、選り取り見取りじゃないか。なぜあいつなんだ。すぐにババアになるぞ、こんな気持ちは今だけだ。と、もっともな見解を己に説いて聞かせたりもした。

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