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青い残り火
第7章 第7章
鈴木が着席しても拍手は鳴らなかった。静寂の中で顔を見合わせる者、振り向いて彼を見る者、そして暫くして、その殆どが「あっ」と小さな声を発して桃香を見た。
固有名詞を使わず、鈴木は言葉を駆使して桃香に告白した。同席している皆がそれに気付き、教室が静まり返った。
桃香は動かない。周囲の視線を感じても真っ直ぐに黒板を見つめたまま、唇を噛み締め、大きな目いっぱいに涙を溜めて、それが落ちないように身動き一つしなかった。
後ろの席にいる千紗の方が、ハンカチでしきりに目を擦っている。
鈴木が「あれ? 拍手は?」と照れ隠しに言うと、さざ波のように拍手が起こった。彼の秘めた想い、素直な心が込められた恋文はクラスメイトの胸に響いた。
「藤村さん」
鈴木の本心に驚いてはいたが、一馬はそれどころではなかった。
「は、はい」
「お願いします」
「はい……」
個々の評価にペンを走らせていた西崎は、のろのろと立ち上がる一馬を見つめ、そのペンを置いて両手を組んだ。
固有名詞を使わず、鈴木は言葉を駆使して桃香に告白した。同席している皆がそれに気付き、教室が静まり返った。
桃香は動かない。周囲の視線を感じても真っ直ぐに黒板を見つめたまま、唇を噛み締め、大きな目いっぱいに涙を溜めて、それが落ちないように身動き一つしなかった。
後ろの席にいる千紗の方が、ハンカチでしきりに目を擦っている。
鈴木が「あれ? 拍手は?」と照れ隠しに言うと、さざ波のように拍手が起こった。彼の秘めた想い、素直な心が込められた恋文はクラスメイトの胸に響いた。
「藤村さん」
鈴木の本心に驚いてはいたが、一馬はそれどころではなかった。
「は、はい」
「お願いします」
「はい……」
個々の評価にペンを走らせていた西崎は、のろのろと立ち上がる一馬を見つめ、そのペンを置いて両手を組んだ。