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青い残り火
第9章 第9章

──彼ね、銀行に勤めてた時の得意先の社長さんなの
あれからいろいろとあってね
再就職させてもらう事が決まったの

──そうですか

──じつは、理恵子のせいで全て失ったのよ。でもね、彼女にはお礼を言いたいの

──お礼って?

──好きでもない男と結婚しなくて良かった、お蔭で今が凄く幸せよ、ってね
ねえ一馬君、かわいい彼女を置いたまま追ってきちゃだめじゃない
あとで必ず連絡するから大人しく待っててちょうだい
わかったわね

男が真琴の腰に手を回した。
密着した二人が雑踏の中に消えてゆく。

「理恵子さん、正解です」

メールを読み返してそう呟くと、一馬は携帯から真琴の連絡先を削除し、着信拒否の設定を済ませた。
真琴にとってそんなことは、大した事ではないと知りつつも、一馬自身がそうしたかった。
男はどう見ても妻帯者で、それを承知で不毛な関係を選ぶ真琴。

それとは対照的な、鈴木や渋谷の真面目さ、魅力的な教師を前に騒ぎ立てるクラスメイト達……。その単純さが、今の一馬には眩しかった。ぼさぼさ頭のジミ田でさえ、その一途さは尊敬に値するのだった。

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