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青い残り火
第9章 第9章
八月も半ばを過ぎ、日の暮れが早くなってきていた。一馬は受験生という立場を利用してバイトを減らし、午後からの部活にも時々顔を出すようになった。

「午後の休憩時間に辞書を見掛けた」という話を後輩達の雑談の中に見つけたからだ。「珍しく髪をおろしてた」という声に聞き耳を立てた彼は、その後輩が次に何を言い出すのかと気が気ではなかった。けれど話はそこまでで、誰の興味も引かないまま、別の話題に移っていった。

「お前、昨日も来たんだって?」

着替えて体育館を出た二人の頭上には星が光っている。

「うん、かわいい後輩たちの為に骨身を削ってる」

「はっ、マジかよ。その真面目さが現役の時に欲しかった。インターハイ出場も夢じゃなかったのに」

渋谷の冗談に「嘘つけ」と笑い、二人は中庭に差し掛かった。

「昨日も電気ついてたけど、あそこ美術室だよな、遅くまで何してんだろ」


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