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青い残り火
第9章 第9章
一馬が指差す方向を見上げた渋谷は「今さら?」と呆れ顔で答えた。

「三島がうちの学園に来てからずっとだよ、毎日じゃないけど」

「へー、初めて気付いた」

美術教師の三島は、一馬達が二年に進級した時に転任してきた。

「お前部活サボってばっかだもんな。三島は美術室の隣の準備室でお絵描き」

「ふーん」

一馬は改めてB棟の三階を見上げた。薄いカーテンから漏れた明かりが、夜の学園に安心感をもたらしていた。
一馬は一年の時に美術を選択したが、その後は美術室に足を運んだことはなく、興味もなかった。だが、三島が来てから美術部員が大幅に増えた事ぐらいは知っていた。

「三島って絵、上手いの?」

「海外で勉強してたんだぜ。たしかイタリア」

「え、まじ?」

「知らないのはお前ぐらいだよ。転任してきた教師を紹介する広報誌とか見ないのかよ」

「見ない」

女子が騒ぐわけだと納得し、一馬は手にしたバッグを担ぎ直した。

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