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青い残り火
第9章 第9章
世界史の山田、物理の村井ら教科担任達に混じり、顔しか知らない教師が数人いた。そんな中、遠目にも見映えがする三島がB棟に入っていくと、そのすぐあとを神谷由香利が追いかけていった。

「神谷のやつ、必死だな……」

手元でシャワーを止め、急いで水呑場まで戻ってきた一馬は、再び、猛暑の中で真面目に水を撒く生徒、を演じた。

そこにいれば西崎を見逃すことはない。
ようやく訪れたチャンスに一馬の胸は躍り、待つ、という大嫌いな行為に喜びを感じている自分に気付いた。

なんだっけ
たのしき恋の盃、ってやつか
島崎藤村め、いい得て妙、ってやつだな

西崎に何かを伝えたいわけではなかった。
それでいて、俺を見てほしい、立ち止まってくれたらもっといい、声を掛けてくれたら、そしてあの事が訊けたら、などと期待は膨らんでいく。

「藤村君、小論文は完成した?」

素通りするとふんでいた富田が珍しく声を掛けてきた。髪型がいつもと違ってこざっぱりしている。

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