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青い残り火
第9章 第9章
「え、はい、休み明けには提出できます」

「そう、それならいいんだ。水撒きごくろうさん」

「はあ……、あれ? 先生、上がんないの?」

水を止め、そこ立ったままの担任を振り返ると、「いや、うん」と所在無げに腕時計に目をやった。

なんだよ、邪魔だな……

この男は西崎を待っている、と感付いた一馬は、手元が狂ったふりで富田に水を掛けようとした、が、すんでのところで中止した。目の端に西崎の姿が見えたからだった。

先生……

一馬が入学した時、西崎は既に学園にいて何度もすれ違った。彼は会釈さえしたことがなかった。何の興味もわかず、彼の学園生活の中で、いなくても一向に困らないのが西崎だった。

なぜもっと早く……

見慣れた筈の地味な服装もゆるく束ねた髪も、髪に隠れた黒い縁の眼鏡さえ、今は息苦しさを伴って一馬の心を強く揺する。そればかりか、無意識に横を通り過ぎただけの過去までも、積み上げてきた純な思い出でもあるかのように胸を熱くさせた。

先生……


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