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青い残り火
第9章 第9章
「俺のは返さなくていいです」
一馬は賭けに出た。西崎がゆっくりと振り返り、その後ろには富田がぽかんと立っていた。
「先生にあげます」
すぐそこにいるのに
手を伸ばせば届くのに……
「いいえ、私が受けとるわけにはいきません、……いいですね」
いいですね
あの時一馬を拒んだ瞳が、より強い意思を示して彼を黙らせた。
一馬は、その背中をただ見つめた。富田と並び、階段を上がってゆく姿が消えるまで。そして消えた時、彼は激しい喪失感に襲われた。
気付いた……
俺の気持ちに気付いた
そして、いとも簡単に決断を下した
いいですね
いいですね……
「良くない、良くないだろ……」
天を仰げば、青空が霞んでいた。
込み上げてくるのは、ずっしりと重い痛みだった。喉の奥につかえている何かが外に出たがってひくひくと震えている。
くそっ……
「西崎澪……」
一馬は賭けに出た。西崎がゆっくりと振り返り、その後ろには富田がぽかんと立っていた。
「先生にあげます」
すぐそこにいるのに
手を伸ばせば届くのに……
「いいえ、私が受けとるわけにはいきません、……いいですね」
いいですね
あの時一馬を拒んだ瞳が、より強い意思を示して彼を黙らせた。
一馬は、その背中をただ見つめた。富田と並び、階段を上がってゆく姿が消えるまで。そして消えた時、彼は激しい喪失感に襲われた。
気付いた……
俺の気持ちに気付いた
そして、いとも簡単に決断を下した
いいですね
いいですね……
「良くない、良くないだろ……」
天を仰げば、青空が霞んでいた。
込み上げてくるのは、ずっしりと重い痛みだった。喉の奥につかえている何かが外に出たがってひくひくと震えている。
くそっ……
「西崎澪……」