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青い残り火
第10章 第10章
私が見たものは何?
図書室の鍵を取りに行くという千紗に「喉が渇いたから水呑場で待ってる」と告げた芽衣は、A棟を出たところで中庭にいる一馬を見つけた。
思わぬ偶然に、やっぱり来て良かった、今日はついてる、と喜び、彼を驚かそうとB棟の陰にそっと隠れた。
「俺のは返さなくていいです」
課題は返却すると言った西崎に、一馬はそう言っていた。
「先生にあげます」
どういう事?
私を想って書いた詩だよね
なにも知らない千紗は、段ボールから取り出した本を確認し、請求ラベルを貼っている。
「まあ、この暑さじゃ水浴びしたくもなるよ。ここはエアコン効かせてるから涼しいんだけどさ」
「……そうだね」
芽衣は千紗から受け取った本を所定の書棚に並べつつ、倒れている本を立てたり、奥に引っ込んでいるものがあれば、手前に揃えて列の乱れを整えていった。
あとで考えよう
作業が遅れる
それでも本を持つ手は震えた。
一馬のあの表情は何?
辞書の後ろ姿に手を伸ばしかけた時の
水をかぶった時の
今にも泣き出しそうなあの顔は──